仕事か、暮らしか。親が直面する“シニア就労の壁”
まだ働けるとがんばっている高齢の親を見て、体力的に大丈夫かと心配になったことはないでしょうか。
近年は「健康寿命」の延伸や年金だけでは不安な家計事情から、シニア世代でも働き続ける人が増えています。社会とのつながりを持ち、自立心を保つという点では大きなメリットがありますが、一方で「家事や生活の質」に影響が出ているケースも少なくありません。
本記事では、シニア就労が高齢者の日常生活にどんな影響を与えるのか、そして家族が注意すべきポイントについて解説します。
シニア就労のメリット
まず、シニア就労にはポジティブな面が多くあります。
- 経済的な安心:年金や貯蓄だけでは不安な生活を補える
- 社会参加:働くことで人との関わりが増え、孤独感を軽減
- 健康維持:体を動かすことで生活リズムが整い、認知症予防にもつながる
このように「働けるうちは働きたい」という前向きな姿勢は、本人にとっても生きがいになることが多いのです。
見落とされがちなデメリット
しかし、仕事を続けることによって 生活力の低下や家事の負担増 という課題が生じる場合もあります。
1. 家事にかける時間が減る
長時間勤務や不規則なシフト制の仕事では、家事を後回しにしがちです。
結果として、
- 掃除が行き届かない
- 食事が簡素になり栄養が偏る
- 買い物や片付けが滞る
など、生活の質が下がってしまうケースがあります。
2. 体力面の疲労
加齢によって筋力や持久力は確実に低下します。働いた後に家事をこなす体力が残らず、
- 洗濯物がたまる
- ゴミ出しを忘れる
- お風呂掃除や布団干しができない
といった「小さな不自由」が積み重なります。
3. 健康リスクの増加
仕事と家事の両立で疲労が慢性化すると、免疫力低下や持病の悪化につながることもあります。特に高齢者は「無理をしている」ことに自覚が薄いため、知らぬ間に体調を崩すことが多いのです。
家族が気づくべきサイン
シニア就労そのものは悪いことではありませんが、暮らしに影響が出ていないかを観察することが大切です。帰省時や訪問の際に次のような点をチェックしてみてください。
- 冷蔵庫の中が空っぽ、または賞味期限切れの食品が多い
- 部屋が散らかっている、掃除が行き届いていない
- 洗濯物がたまっている、衣類が清潔に保たれていない
- 疲れている様子なのに「大丈夫」と言い張る
- 通院や服薬が後回しになっている
これらは「就労による生活力低下」のサインかもしれません。
家族ができるサポート方法
1. 生活リズムを一緒に確認する
無理な勤務時間になっていないか、休養や食事の時間が確保できているかを聞いてみましょう。
2. 家事の一部を外部に頼る
掃除や買い物などを訪問サポートに任せることで、親の負担が減り、安心して働き続けられます。
3. 食事支援を検討する
宅配弁当サービスや買い物代行を活用することで、栄養不足を防げます。
4. 「やめる勇気」を一緒に考える
働き続けることがかえってリスクになる場合もあります。無理をしすぎていないか、定期的に「続ける・減らす・やめる」を話し合うことも大切です。
まとめ
シニア就労は「生きがい」「経済的安心」「健康維持」などのメリットがある一方、家事や生活力の低下という見過ごせないデメリットも存在します。
特に「まだ大丈夫」「迷惑をかけたくない」という気持ちから、本人が生活の不自由を隠してしまうこともあります。
だからこそ、家族が帰省や訪問時に小さな変化に気づき、無理のない働き方と暮らしのバランスを一緒に考えることが大切です。
「働くこと」と「暮らすこと」の両立をどう支えるか――そこに、家族の安心と親の健やかな生活を守るヒントがあります。
